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2人用台本 シリアス

フリー台本『天使と子羊くん』【2人用】

 

2人用の練習用台本です。

5分程度の短い台本になっていますので、

レッスンや稽古等で、ご自由にお使いください。

 

キャスト総数2人(男1:男女兼用1)+モブ2人

登場人物

男:感情とリアクションが薄い。現世では、ブラック企業に勤めており精神苦から自殺した。

天使:いつも笑顔を浮かべているが目が笑ってない。基本飄々としている。

モブ:男の母と姉。仲はいい。

 

所要時間(目安)5分程度

 

ジャンルシリアス

 

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『天使と子羊くん』

 

【雨の音とたたずむ男】

 

【白い部屋で、目を覚ます男】

 

男「なんだ、ここ。」

 

天使「あ、目覚めたー?ようこそいらっしゃい、迷える子羊くん!」

 

男「だれだよ、あんた。」

 

天使「誰だと思う?初対面の君には難しいと思うけどね。」

 

男「わかんねぇ。」

 

天使「そうでしょう、そうでしょう。僕は天使。」

 

男「天使?」

 

天使「そう、それ以上でもそれ以下でもない。」

 

男(ナレーション) 目覚めると、白い部屋にいた。見覚えはない。その部屋にあるのは、自分が寝ていた古いベットと知らないやつ。この部屋はひどく狭く感じたが、それと同時にどこまでも空間が広がっているような、そんな感じがした。

 

男「あぁ、そう。」

 

天使「冷たい反応だねー。もっと驚いても良くない?目覚めたら、知らない部屋にいて、しかも天使がいるんだよ?もうちょっとリアクションが欲しいなー」

 

男「・・・ここどこだよ。」

 

天使「ん?あー、教えたいは教えたいんだけどさ。なんとも説明しずらいんだよね。なんていうの?生と死の狭間というか、天国と地獄の中間地点的な?」

 

男「生と死の狭間・・・」

 

【男、気づいたような顔をする】

 

男「そうか、俺、死んだのか。」

 

天使「おう、理解が速いね。君はできる子羊くんだ。今までここに来た奴らの中にはさ、泣き喚いて手が付けられないのもいたし、ここから帰せってうるさいやつもいたんだよ。自分から来たくせに、帰せって、笑っちゃうよね。」

 

男「・・・ここは地獄か?」

 

天使「失礼な。僕、天使って言ってるでしょ?しかも、さっき説明したじゃん。ここは天国と地獄の中間地点だって。」

 

男「あんたさっき、自分から来たくせにって言ったよな?」

 

天使「うん。ここに来る奴らは皆、わざわざ自分からここに来てる。」

 

男「それは、俺もか?」

 

天使「もちろん。」

 

【男、眉間に皺を寄せる】

 

天使「その顔を見るに、なんにも覚えてなさそうだね。ここに来る奴らみんなそうなんだ。何の仕様か知らないけど、ここに来る時の記憶だけすっぽり抜けてる。毎回相手するこっちの身にもなってほしいよね。」

 

男「いや、覚えてる。」

 

天使「え、珍しい。初めてだよ、記憶があるやつ。」

 

男「・・・いいや、記憶はない。」

 

天使「えぇー、どっちなのさ。」

 

男「・・・自分が死んだってことだけはなんとなく覚えてる。でも、なんで死んだのかは分からない。」

 

天使「中途半端な記憶の残り方してるね。まぁ、いいや。別に記憶が無くたって困ることないからさ。」

 

【間】

 

男「・・・自殺か?」

 

天使「・・・君は本当に理解が速いね。そう、君は現世で自殺した。だから、ここへ来た。」

 

男「そうか。あんたは全部知ってるんだな。」

 

天使「まぁ、天使だからね。現世の君は相当悩んでたよ。新卒で入った会社がブラック企業、支払われない残業代に典型的なパワハラ上司。それに加えて、高校時代から付き合ってた彼女に振られたときた。ふふ、君の思い立ってからの行動の速さは目を見張るものがあったよ。」

 

男「お前、本当に天使か?えらく楽しそうだな。」

 

天使「そう見える?顔に出ちゃうタイプでね。」

 

男「悪趣味だな。」

 

天使「ははっ。だって、死こそ最大の救いだと思わないかい?」

 

男「・・・あんた、やっぱり悪魔だろ。」

 

天使「僕は、れっきとした天使だよ。思うんだ、生は死があるからこそ輝く。それなのに君たちの生きる世界では死までの道のりがあまりに長すぎる。死に至るまでに100年もあれば、どんな輝きもくすんでしまうものさ。だから、君の選択は素晴らしいと思うよ。」

 

男「・・・俺は間違ってると思う。」

 

天使「はっ、なにを言っているのさ。決断したのは君自身だろ?」

 

男「死ぬときの俺が、何を考えてたのか分からない。でも、この世に死に値するようなことは起こらない。どんな理由があっても生きるべきだったと、今の俺なら思う。」

 

天使「ずいぶん意見の変わる人だね。死を選んだ君なら分かってくれると思ったんだけどな。」

 

男「それにあんたは、ここを生と死の狭間だといった。・・・俺はまだ死んでないんだろ?なら、俺は帰るよ。」

 

天使「帰る?どこに。」

 

男「元々俺がいた場所に。」

 

天使「君、調子の良いこと言うね。確かに君の予想通り、現世の君はまだ死んでない。でも、いいこと教えてあげるよ。君は死ぬ時、列車に飛び込んだ。現世の君は辛うじて息はしているけど、それはひどい状態さ。今帰っても、元の生活には戻れないだろうね。それに、多額の賠償金を背負うことにもなるだろうな。もちろん君自身は払えないから、家族がボロボロになりながら負債を背負うのを黙ってみてることしかできない。ここで君が死を選べば、そんな事なんか気にする必要はなくなる。ちょっと細工をすれば、家族のことを忘れて過ごすことだってできる。それでも、君は帰るというのかい?」

 

男「あぁ。」

 

天使「・・・君はもう少し面白い人間だと思っていたよ。まぁ、いい。せいぜい無様に生き続ければいいさ。また会えるのを楽しみにしているよ、子羊くん。」

 

【間】

 

女1「翔!聞こえる⁉」

男「・・・あれ、俺・・・」

女1「お母さん、翔が!」

女2「翔!」

女1「私、看護婦さん呼んでくる!」

女2「ホント、大バカ者!首吊ろうとするなんて・・・」

男「・・・あぁ、そ、か。俺、電車なんかに、飛び込んでない・・・」

女2「何言ってるの?もう少しで先生来るからね‼」

 

【バタバタという足音が聞こえる】

 

 

―終わり―

 

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